第三十章  初対面


【時】西暦2030年(一太郎と花子の回想)
【空】摩周村民宿
【人】一太郎 花子 山内 小田 ホーリー サーチ ミト 住職 リンメイ


***

「大丈夫か!」
 緑色の煙幕の中を右往左往しながらミトが戦闘ヘルメットの内蔵マイクを通して大声を出す。すぐにホーリーから元気な返事が届く。


「なんとか!」


 サーチライトがその声の主を探すかのように集中する。同時に散発的な銃声が聞こえる。


「伏せろ!」


 ホーリーが横にいるサーチの頭を抑えつけて戦闘ヘルメットのバイザーを目元まで下げる。バイザーを通すと暗闇でも昼間のように見える。立ちこめる緑色の煙でぼんやりしているが、数台の車と二十人ほどの大柄な男を確認する。


「かなり旧式の銃だ」

 

[64]

 

 

 ホーリーはレーザー銃を構えるとサーチライト目がけて撃つ。サーチもホーリーより正確にレーザー銃でサーチライトを次々と破壊する。少し離れたミトも応戦する。すぐにまわりは暗闇に支配される。


 ミトたちは戦闘ヘルメットの耳元にあるスイッチをオンにする。集音機能が作動してさっきまで銃を撃っていた男たちの会話が聞こえてくる。


「あいつら三人だけじゃなかったのか」


「あの丸いものは何だ」


「地震にしてはおかしい」


「ボスに連絡しろ」


「連絡できません。アンテナがこわれました」


 男たちが孤立したことを確認すると、ミトは全員に点呼させる。


「一」、「二」


 サーチが「三」を、ホーリーが「四」を、住職が「五」を、リンメイが「六」を告げたあと「十四」を最後に点呼が終わる。


「少なすぎる」


 ミトは不安を覚えながらも、目前の事態に対処するために命令を下す。


「できるだけ殺さないように始末しろ」

 

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 兵士が低い体勢で素早く車に近づく。格闘が始まって銃声がする。


「彼らの武器は我々の戦闘服には無能だ。だが気を抜くな!」


 格闘のさなか車が次々と爆発する。ミトがあわてて命令を変更する。


「やつらはそれなりのプロだ!始末しろ!」


 兵士が電磁ナイフを手にする。しかし、男たちは抵抗するどころかその場に次々と倒れる。


「全員自害しました」


「奥歯に毒物を仕込んでいたようです」


 倒れた男たちの顔に大きな黒い斑点が浮かぶ。


「何というやつらだ」


「がれきの中で気を失った人間が三人います」


 リンメイの報告が入る。ミトがこの三人が自害した男たちの標的だと考えながら時空間移動装置の確認を兵士にうながすと、意外にも住職からの報告を受ける。


「時空間移動装置は三基だけじゃ」


 ミトの横をホーリーとサーチが通りぬけて時空間移動装置のそばにいる兵士にかけよる。


「あとの七基は?」


「わかりません」


 ホーリーが時空間移動装置に入るとサーチもあとに続く。

 

[66]

 

 

「かなりダメージを受けている」


 ホーリーが素早くコントロールパネルで時空間移動装置の状態を確認する。サーチは救急バックを取りだすと時空間移動装置から出てリンメイに声をかける。いつの間にかまわりが少し明るくなる。


「救急バックよ」


 リンメイがサーチからバックを受けとると気を失った一太郎たちのところへ戻る。


「ふたりは命に別状ないけれど、もうひとりは昏睡状態です。頭に小さな穴があいているわ」


 リンメイが救急バックを開けて消毒液を取りだす。


「とりあえず殺菌するわ」


「ベッドの代わりになるものを作ってくれないかしら」


 サーチがそばにいる兵士に指示する。


「サーチとリンメイが救急活動に入りました」


 ミトに報告が入るが、そのミトはため息をつくだけだ。ホーリーとサーチと三人の兵士の計五人、ミトと住職とリンメイとふたりの兵士の計五人、そして五人の兵士が乗っていた三基の時空間移動装置だけがここに到着した。


――残りの七基は?


 ミトがホーリーの時空間移動装置に近づくと外壁がかなり損傷していることに気付く。陽が

 

[67]

 

 

昇りはじめて急にまわりが明るくなるが、急変した事態にミトの表情は暗い。


「どうだ?」


 ミトの言葉にホーリーがきびしい横顔でモニターを見つめる。


「時空間移動したんじゃない。もちろん空間移動したのでもない。時間移動しただけだ…」


「土偶と遭遇した場所と同じ場所にいるということか?過去に移動したのか?」


 性急なミトの質問にホーリーが大きく首を横に振る。


「過去ではない」


「未来!未来へは移動できないじゃないか」


「もちろん未来でもない」


「ホーリー、はぐらかさないでくれ」


「よくわからない。あえて言えば空間位置は同じままで、まったく違う時間軸へ移動した。崩壊した建物に突っこんだように見えるが、ここは時間移動する前にいた空間座標と同じ座標なのだろう」


「まさか!」


「コントロールパネルの表示を見てくれ」


「!」


 ミトの顔から血の気が引く。コントロールパネルの時間を示す部分に砂時計のマークが表示

 

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されている。それは演算できない時間軸に移動したことを示すコンピュータの意思表示だ。


***

「峠を越したわ。でも、こんな手術の痕跡を見たのは初めてよ」


 サーチが額の汗をぬぐって小田の頭部を見つめる。


「かなり緻密な手術だわ。筋がいい。手先が器用で訓練を積んだ医者の手術だわ」


 リンメイが背伸びをする。サーチはそんなリンメイの背後の景色を見て驚く。摩周岳が見える。サーチは瞬示と真美が現れるのをこの周辺で待ち続けていたことを思い出す。何度も何度も偵察に訪れた摩周湖を望む摩周岳が目の前にそびえている。


「ホーリー!」


 時空間移動装置のドア付近でミトと今いる時空間を話しあうホーリーに向かって叫ぶ。


「あれを見て!」


 サーチが摩周岳を指差す。ホーリーが頭をあげる。


「摩周クレーターになる前の摩周湖!あの山の手前に摩周湖があるのよ」


 ホーリーは時空間移動装置に戻ってコントロールパネルのスイッチを入れるとドアから首を出す。


「サーチ、ミト!偵察だ」


「時空間移動装置は動くのか?」

 

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 ミトが大声を出す。


「時間移動はできないが、空間移動ならできる」


 ミトが時空間移動装置に乗りこむと続いてサーチも乗りこむ。


「待機しろ」


 ミトがサーチと入れ替わってドアから兵士に命令すると首を傾げながら両手でドアを閉める。時空間移動装置が回転を始めると摩周岳の頂上と同じ高さまで急上昇する。回転が止まるとモニターに摩周湖全体が映しだされる。


「地殻変動でもあったのかしら。形が変わっているし、水がほとんどない。でも摩周湖に間違いないわ」


「俺の記憶では何とも言えないなあ」


「私はこの辺に十年以上いたのよ」


「そうだったな」


「ここは西暦2011年の地球だわ」


「違う!」


 ホーリーがサーチの言葉をさえぎる。ふたりは同時に腕時計を見る。ミトとホーリーが先ほどまで議論していたふしぎな四桁の数字「2030」が示されている。


「2030」

 

[70]

 

 

 サーチがつぶやく。


「この世界は俺たちの時間軸とはまったく違う世界だ」


「どういうこと?」


「2030の上についている記号を見ろ」


「S……S2030」


 ホーリーはどう説明しようかと、あるいは自分自身どう納得しようかとしばらく黙る。そして、コントロールパネル上に浮いている透過キーボードに触れる。かつて何度も入力した空間座標を思い出しながら慎重にキーをなでる。モニター画面を確認すると操縦席のメインスイッチを入れる。時空間移動装置が一瞬のうちに民宿の海側に到着する。ホーリーは器用に時空間移動装置をあの民宿のすぐそばの海辺に近づける。


「ミトは残ってくれ」


 時空間移動装置の損傷がはげしくドアの自動開閉装置がこわれている。ホーリーは仕方なく両手でドアを持ちあげてサーチの手を取って海辺に降りる。


 ゆるやかな坂道を登って民宿の勝手口にたどり着く。勝手口のドアには鍵がかかっていない。しかし、人気はない。ふたりは食堂に入ると驚いて顔を見合わす。テーブルがこわれ、椅子が倒れている。その椅子の横には包丁が落ちていて調理場では沸騰したヤカンがカタカタと音をたてている。

 

[71]

 

 

「ケンタが危ないわ」


「戻るぞ!」


 ホーリーが直感的にサーチと意識を共有する。何者かがこの民宿に侵入してケンタをさらったのかもしれないとサーチは想像する。しかし、ホーリーが時空間移動装置に向かって走りながらサーチの想像を否定する。


「ケンタじゃない。俺たちの知らない誰かがほんの数分前に何者かに誘拐されたんだ」


「そんな!ケンタじゃなければ誰なの!」


 サーチの叫び声にミトが反応して時空間移動装置のドアを持ちあげる。


「どうだった?」


 ホーリーが操縦席に着くと時空間移動装置を上昇させてから回転を落とす。モニターにそれほど遠くないところを走る車が映しだされる。天井にサーチライトを装着している。


「あの男たちが乗っていたのと同じ車だ」


 ミトはすべてをホーリーに任せる。


「この道は摩周湖に向かう道よ」


 すぐに時空間移動装置が追いついて車の前に立ちはだかる。ドアを持ちあげてミトとホーリーが時空間移動装置から降りるとレーザー銃を構える。急停止した車の窓から銃口が光ると正確にミトとホーリーの戦闘服に命中する。ふたりはひるむことなく窓から出ている銃口を狙ってレーザー銃を発射すると銃を持つ手が蒸発する。

 

[72]

 

たまらず四人の男が降りてくる。すぐさま自害する暇を与えることなく射殺する。そしてホーリーが車に飛びこんで気を失った女性を引きずりだすと、おおいかぶさるように地面に這いつくばる。ミトも地面に伏せると車が爆発する。


「ホーリー!」


 サーチが時空間移動装置から飛びだす。


「大丈夫だ」


 道路の土で汚れた女性の顔をホーリーが無造作に素手で拭く。


「ケンタじゃないだろう」


「会ったこともない女性だわ」


 ホーリーの腕の中で気を失った女性があえぐような声を出す。


「一太郎……」


***

 こぎれいに片付けられた民宿の食堂で一太郎と花子、そして山内がていねいにミト、ホーリー、サーチ、住職、リンメイに礼を述べる。そして摩周村での事件やその事件にいたる経緯を一太郎と山内が説明する。


 ミトたちはこの世界がまったく自分たちの世界ではないことに落胆しながら、一太郎たちの話に驚くだけだった。

 

[73]

 

 

 一睡もしていない一太郎と山内に疲労の波が押しよせる。サーチが一太郎の言葉が途切れたときを見計らってやさしく声をかける。


「少し、眠った方がいいわ」


「そのとおりだわ」


 花子がサーチに同調する。


「そうだ!小田社長の様子が気になる」


 小田は二階の客間で眠っている。一太郎、花子、山内がミトに一礼すると二階へ向かう。


「ホーリーの言うとおりね。確かにここはケンタの民宿じゃない」


 崖の下には時空間移動装置を格納する円筒形の穴もなければ、民宿の奥の寝室にはコンピュータもない。サーチは信じられないという表情を崩さずに言葉を続ける。


「ほとんど、私がここにいたときと同じなのに」


「ここは一太郎と花子の家だ。だが、ここも安全な場所とはいえない」


 ホーリーはすでに現実を受けいれていた。ミトは食堂の窓から兵士が民宿のまわりを警備する様子を確認する。


「でもすごい発明ね。私たちの生命永遠保持手術とは比べようがないけれど、無言通信なんて考えもつかない技術だわ」

 

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 やっとサーチもこの世界を受けいれる。


「開発したばかりというのに争奪戦が始まっている」


「陽の目を見ることができるのかしら」


 ミトは未来からやって来たとしか自分たちのことを説明していない。しかし、一太郎たちは意外と素直にミトの話を信用した。彼らの科学的な素養がミトの話に違和感を抱くことなく現実のものとして受けいれた。


***

 二階では意識を取り戻した小田がまだすっきりしない頭で一太郎と山内から報告を黙って聞いていたが、第一声はとがめる言葉だった。


「無言通信のことをなぜ話してしまったんだ」


 しかし、一太郎がミトたちが未来からやって来たという話を追加すると小田の頭がフル回転する。すぐ花子に食堂へ案内させる。さすがに一太郎と山内は横になるとそのまま眠ってしまう。


 食堂に現れた小田はミトに上体を折り曲げて深々と頭を下げると、自己紹介も省略してすぐに本題に入ろうとする。


「未来へは戻れないのか?時空間移動…何とか言ってたな…そう、そうだ!タイムマシンはこわれたのか」

 

[75]

 

 

 小田の言葉にミトは驚くばかりで返事ができない。まったく知らない時空間へ来て混乱している自分と小田を見比べて、小田の思考の切りかえの早さに驚嘆する。どんなに大きな変化が起ころうとも小田はすぐに順応して対処しようとする。


「この世界で生きていくとしたら、これからどうするのですか?」


 ミトが苦笑しながら小田を見習おうと思いながら応える。


「わかりません。我々はこの世界に来てからまだ一日もたっていないのですよ」


 性急な小田は質問を止めない。


「私の方は一太郎からの報告を受けて一時間もたっていない。力を貸してくれないか。無言通信システムを公正に世の中に普及させれば、どれだけ平和な世界になることか」


 ミトが思わず苦笑いをする。


「参ったな、小田さんには。確かに無言通信システムをめぐって卑劣な戦いが繰り広げられることは火を見るより明らかだ」


「故障したとはいえ時空間……?なんだっけ?空間を自由に移動できる機械があるんだろ。だから力を貸して欲しいのだ」


 小田はあきらめずに次々と言葉を繰りだす。ホーリーが小田を制してからミトに話しかける。


「小田さん、ちょっと待ってください。ミト、七基の時空間移動装置の行方とそれに宇宙戦艦が気になる」

 

[76]

 

 

 ミトは小田を無視してホーリーに向きあう。


「宇宙戦艦?」


 ミトには残りの七基の時空間移動装置のことだけしか念頭になかった。


「あくまでも推測だが……」


 ホーリーは小田が黙りこみミトとの会話を一言も、もらさずに聞く体勢に入ったのを横目で確認してからミトと向きあう。


「あの緑の時間島に宇宙戦艦が割りこむように突っこんだのを覚えているか」


「艦長の命令で宇宙戦艦が時間島に突っこんだとでも言いたいのか」


「Rv26なら、考えられないこともない」


 ミトがうなずきながらホーリーに次の言葉を催促する。


「時空間移動装置はもちろん時間島も時空間を移動するときに発する特殊な信号のことを知っているか」


 ミトがいらだちながら当然だと首をたてに振る。


「三基の時空間移動装置の記録を調べたところ、十基の時空間移動装置全部がこの世界へ移動してきたことは確認できたが、そこまでだ」


「この世界で離ればなれになったということか……それで宇宙戦艦は?」


「戦艦もこの世界へやって来ているはずだ。いや、やって来ていると思う」

 

[77]

 

 

「推測の域だな。ホーリー、なぜそう考える?」


「宇宙戦艦の時空間移動時に発する信号の痕跡は時空間移動装置のパターンとはまったく違う」


 ミトは目を閉じるとホーリーの話を掘りさげる必要性を感じる。ミトの心境を察するようにホーリーが一気に言葉にする。


「宇宙戦艦は時間島に割りこみ、そして俺たちに追従しようとした。Rv26なら、そのような行動を取るに違いない。Rv26はアンドロイドというより人間に近い。割りこむには割りこんだが、完全に時間島の時空間移動に追従できなかったのだろう。あるいは時間島に割りこんで時空間移動するのをあきらめて、時間島の信号を頼りに時空間移動したかもしれない。いずれにしても宇宙戦艦が時間島に割りこんだショックで、時空間移動装置は複数のグループに分断されてこの世界に時空間移動したんじゃないかと思うんだ」


 ミトが目を開ける。


「残り七基の時空間移動装置はこの世界のどこかに移動してきているが、宇宙戦艦はこの世界に移動してきているかもしれないし、ほかの時空間に移動しているかもしれない。こう理解して差し支えないか」


 ホーリーがミトの的確な理解に大きくうなずいてみせる。さすがに女たちの軍隊の司令官だっただけのことはある。そのミトが続けてホーリーに言葉をぶつける。

 

[78]

 

 

「素朴で単純な質問をしてかまわないか」


「この世界のことだろ?」


 今度はミトが大きくうなずく。


「パラレル・ワールドなのかもしれない」


「パラレル?」


「そうだ。この建物が動かぬ証拠だ。俺たちの世界と並行して存在する別の世界……」


 このホーリーの言葉に誰もが納得して黙りこむ。しばらくしてミトが口火を切る。


「まず、七基の時空間移動装置の捜索から始めるべきだな。宇宙戦艦は……」


 ミトがすべてを言い終わらないうちにいきなり小田が発言する。


「その捜索に是非協力させてくれ!」


 小田が食堂のテレビを指差す。


「全世界の報道機関が発する情報をくまなく収集して異変を見つけだす」


「情報を分析して、その中の重要な情報を即座に我々に伝える方法はあるのか?」


 ミトが不満そうに小田を見つめる。


「今、それができる人間は限られているが、信用できる者に無言通信チップの埋込手術を施せば、無言通信ですぐに情報を伝達することができる」


「テレパシーですか」

 

[79]

 

 

 リンメイが初めて発言する。


「テレパシーではない。無言通信だ」


 小田が短いヒザを精一杯繰りだす。


「是非、協力させてくれ」


 小田が頭を大きく下げると同時にミトがきっぱりと応える。


「わかりました。その前に無言通信のことを詳しく説明してください」


 小田の相好がくずれる。ミトはすぐさま無言通信のことを説明しようとする小田を制して、苦笑しながらホーリーにまだ残っている質問をする。


「宇宙戦艦の方だが……」


 ホーリーがミトの続きのセリフを読みとるように応える。


「宇宙戦艦がもしこの世界に来ているなら、Rv26の方から俺たちを探しに来るだろう」


「そのとおりじゃ。Rv26なら必ずそうするはずじゃ」


 やっと状況を把握した住職が力強くホーリーの言葉を後押しする。


「わかった」


 ミトが立ちあがって小田に近づくと手を握る。


「小田さん、作戦をつめよう」


 そのとき、兵士が食堂に入ってくる。

 

[80]

 

 

「二輪車が二台近づいてきます」

 

「ミブと二天だ」


 小田が叫ぶと外へ出ながら無言通信をミブに送る。ミトも外へ出て兵士に告げる。


「攻撃するな。味方だ」


 混乱した状況のなか、異なる世界に生きている人間が、今、手をたずさえた。

 

[81]