第三十二章から前章(第三十五章)までのあらすじ
硫黄島で日本政府高官との会談が始まったとき謎の潜水空母から戦闘機が飛来してミトたちを追いつめる。そのとき滑走路が盛りあがるとRv26の宇宙戦艦が現れる。
御陵の鳥居の下でお医者さんごっこをしていた幼い瞬示と真美の成長を見届けるために生命永遠保持手術の設備を宇宙戦艦内の工場で製造して手術を受ける。その瞬示と真美の二十二歳の誕生日の前日、埴輪の鳥が涙を流す事件が起こる。
その後宇宙戦艦が地球から離れると瞬示と真美が宇宙から御陵に戻ってくる(第二十八章)。一方、ミトの命令で御陵に向かったホーリーたちの時空間移動装置が消滅する。
時間島の中で瞬示と真美は民宿の食堂にいる一太郎と花子の話を聞いていたが、直接対面して両親が自分たちとそっくりな子供を産んだことを知る。そして変わり果てた摩周湖の湖底で行方不明だった七基の時空間移動装置を発見したあと壮大寺に向かう。
【時】永久紀元前400年
【空】関ヶ原
【人】ホーリーサーチケンタ五郎忍者明智光秀
[222]
***
ホラガイを吹く音に絡みながら、大地を揺るがす軍団の高揚した武士の声が関ヶ原に響きわたる。
「光秀!覚悟!」
馬に乗った十数人の武将とともに桐の紋を染め抜いた旗を背中に巻きつけた百人ほどの足軽が手薄になった明智光秀の陣地に叫び声をあげながら突進する。そのとき、陣地と十数騎の武将のちょうど中間あたりに突然四基の青い時空間移動装置が回転しながら現れる。
馬がいななきながら後足で立って背を伸ばすと、こらえきれず何人かの武将が落馬する。時空間移動装置の回転が止めると着地する。かろうじて落馬を免れた数人の武将の「ドウドウ」という声が響くだけで、あたりには何とも言えないふしぎな静けさが漂う。
余りにも突然の出来事に光秀やそのまわりを固める武将、足軽、そして攻めこんだ武将もまるで時間が止まったように動かない。ホラガイの音も怒濤のようにうねる大きな声もすべて消える。すべてが凍りついて時間が止まる。
時空間移動装置のドアが跳ねあがると、止まっていた時間が勢いよく流れだすように佐助以下六名の忍者が地上に降り立つ。すでに抜刀した忍者が生き返ったように動きだす馬上の武将
[223]
に向かって風のように近づく。ホーリーが制作した電磁レーザー忍剣で忍者が武将の鎧を次々と切りさく。さらに十字手裏剣を投げつけると足軽が顔を押さえながら倒れる。何とか忍者の攻撃をかわした三人の武将が馬にムチを入れて光秀に槍を向ける。
半蔵と才蔵が光秀の陣地に急走するが、光秀は応戦するのが手一杯のところまで追いつめられる。そのとき馬上の武将の鎧がはじけ散る。ホーリーとサーチのレーザー銃が命中したのだ。
「どうなっているの!」
サーチが大声を発する。ホーリーも大声をあげる。
「とにかく、忍者に加勢するんだ」
五郎やケンタや兵士がライフルレーザーを手に時空間移動装置から降りる。ホーリーの言葉を受けて光秀を討ち取ろうとする足軽にライフルレーザーを発射する。
「光秀殿」
「安心せい!」
光秀の方から忍者に近づく。
「おまえは!四貫目!生きておったのか」
「このとおり」
「あの者たちは?」
[224]
「仲間でござりまする」
やっと桔梗の紋を染め抜いた旗を持った光秀の軍勢が大声をあげながら戻ってくる。
「殿は無事だ!」
「秀吉め、やってくれるわ」
光秀はペッとタンを吐きすてる。そのタンには鮮血が混じっている。
「深追いしすぎました。申し訳ござりません」
戻ってきた騎乗の武士の中で一番豪華な甲冑を身にまとった大男が馬から飛びおりると片ひざをついて光秀の前でひれふしてから横目でホーリーたちをにらむ。
「小奴らは?」
光秀はこの大男が忍者のことをたずねているものと思いこみ「四貫目よ」と応える。
「四貫目!」
驚きの声を大男があげるが、彼がにらみつけているのは当然四貫目ではない。その視線に光秀が気付いて告げる。
「四貫目の仲間じゃ」
「仲間?忍びの者にしては奇妙な服を着ておるぞ」
引き返してくるときに忍者はもちろんのことホーリーたちの戦いぶりをつぶさに見ていたこの大男はそれ以上のことを口にせずに、黙ってホーリーと時空間移動装置を交互に見やる。
[225]
光秀の脳裏に大坂城に現れた瞬示と真美の姿が浮かぶと無言のままホーリーとサーチを見つめる。大男が沈黙を破る。
「どうしまする」
「まずは体制を整えよ」
光秀が我に返り、何とか平常心を取りつくろう。
「おう」
大男はくるりと光秀に背を向けると続々と集結する五百騎ほどの騎馬隊にこれ以上の声が出ないほどの大声をあげる。
「陣を組め!油断するな!」
***
佐助、いや四貫目が光秀の質問に応じる。一方、ホーリーが才蔵、半蔵に質問を浴びせる。
「ここは関ヶ原というところ」
「我らが以前大凧に乗って大坂城上空の時間島に吸いこまれたころ、この関ヶ原での合戦の準備をしておりました」
才蔵の言葉にホーリーとサーチは瞬示や真美から聞いた話を思い出す。時間島で永久紀元前400年の大坂城に時空間移動したときの話だ。
「御陵の時間島に接近したとたん、ここへはじき飛ばされたということなのかしら」
[226]
「少なくとも映画の撮影現場でないことだけは確かだ」
「私たちの世界ではこの関ヶ原の合戦で明智軍が豊臣軍を打ち破ることになっているわ」
「確か、瞬示は自分たちの世界とぜんぜん違うと言ってたな」
「あのふたりの世界では豊臣軍が勝ったのかしら」
「わからない。もっとほかの展開になったのかもしれない」
「どうするの、ホーリー」
「どうするって、佐助の味方になるほかないだろう」
ホーリーとサーチの会話に五郎が加わる。
「ということは当然、光秀が勝利することになる」
「ということは、ここは私たちの世界の永久紀元前400年ということになるのね」
「もし光秀が敗れると、ここは瞬示たちの世界になってしまうのか」
ホーリーが話を打ち切って、才蔵の持つ電磁レーザー忍剣を取りあげて束のあたりを指差しながら説明を始めると、半蔵は自分の忍剣で操作のひとつひとつを確認する。光秀が四貫目とともにそんなホーリーのところにゆっくり近づく。
「頼もしい助っ人だ」
光秀がうれしそうにホーリーを見つめると急に余裕と自信を持つ。
――確かに御陵の神が守ってくれた
[227]
光秀が心の中でつぶやくとまわりに響くような声をあげる。
「この方々に無礼はならんぞ!」
そのときホーリーの近くで強烈な白い輝きが発生する。
「何事じゃ」
四貫目がホーリーにかけよる。
「簡単だろ」
ホーリーが才蔵、半蔵や女の忍者に電磁レーザー忍剣の詳しい使い方の説明を終える。
「ホーリー」
四貫目がホーリーの前に立つ。
「佐助にも新しい忍剣の使い方を説明するときが来たようだ」
「新しい使い方?電磁レーザー忍剣だとは聞いていたが、今まで使っていた電磁ナイフとはまったく違うのか」
ホーリーが忍剣を抜くような仕草をして四貫目をうながす。四貫目が背中の電磁レーザー忍剣を抜く。
「単に斬るだけの道具ではない。束にある青い鍵型の部品をずらしてロックを解除すると、黒いボタンを押せるようになる。そのボタンを押すとこうなる」
ホーリーは四貫目の持つ忍剣に手をそえて数メートル先の岩の方に刀の切り身側を向けなが
[228]
らボタンを押す。切り身側全体から鋭い光線が発射されて、岩をまっぷたつにする。
「まるで斬鉄剣だ」
「佐助ならすぐ使いこなせる。切り味が悪くなったら陽にかざせばエネルギーが補充される」
四貫目がひとりで試してみる。才蔵や半蔵も同じように刀を抜いて構える。
「レーザー銃の代わりにこれを使ってくれ」
「わかった。ところでわしのことは四貫目と呼んでくれ。佐助という忍者は豊臣方の忍者だ」
「住職に初めからちゃんと名乗っていればよかったのに」
サーチがからかうように四貫目から才蔵に目を向ける。
「才蔵たちは?」
「名はあってないようなものだ。今までの名で呼んでくれ」
才蔵が恐縮しながら応える。
「四貫目は中忍でわしらは下忍なのだ。下忍にはあだ名しかない」
四貫目が才蔵に心付ける。
「もうそのような区別はない。それにしても貴重な武器をちょうだいした。心して使うのだ」
***
ホーリーとサーチそして五郎とケンタに五人の兵士が小高い丘に陣取る。
「あのような場所で敵を迎え撃つのはいかがなものか」
[229]
先ほどの大柄な武士が光秀に耳打ちする。
「やつらにはやつらのやり方があるのだろう」
「しかし、鉄砲で狙われたら身を隠すところがない。しかもキラキラと青色に輝く丸いものまでそばに置いておる。狙ってくれと言わんばかりでござります」
「放っておけ。それより我らの体制は整ったか」
光秀の言葉にまわりの武士が大合唱する。
「よーし!」
光秀がそう叫んだとき丘からはるか彼方の豊臣軍に向かってライフルレーザーが静かにまぶしい光を一斉に放つ。生命永遠保持手術を受けたホーリーたちの射撃は正確で無駄がない。
「あまりエネルギーを消費するな。相手は何百年以上も前の軍隊だ」
ホーリーが大声をあげる。射程距離がせいぜい五、六十メートルの鉄砲に比べ、レーザー銃の射程距離は無限だ。数キロ先の豊臣軍の騎馬隊を次々と仕留めていく。
「出陣!」
光秀の声がホラガイの音にかき消されると、すぐにおびただしい数の馬のひづめの音がとどろく。すでに忍者の姿はない。
戦いは数分もたたないうちに明智軍の圧勝に終わる。豊臣軍は全滅に近く、残った兵は文字どおりチリヂリとなって関ヶ原から姿を消す。勝ち鬨が怒濤のごとくあがる。
[230]
「エネルギーカートリッジの残量が半分を切りました」
兵士がホーリーに報告する。
「あまり気持ちのいい戦い方じゃなかったな」
ホーリーの言葉にサーチがうなずく。
「忍者たちは?」
ケンタがむなしそうに空を仰ぐ。そのとき五郎の鋭い声がする。
「ホーリー!」
ホーリーが振り向くと時空間移動装置が回転している。四基すべてが回転している。
「止めろ!」
ホーリーが叫びながら胸ポケットからリモコンを取りだしてボタンを押す。
「どういうことだ!とにかく止めろ!」
やっと回転が止まる。
「ドアを開けろ!」
ホーリーがわめきながらリモコンを操作する。時空間移動装置のドアが跳ねあがると直感的に命令する。
「乗りこめ!忍者はどこにいる?」
サーチがホーリーに追いついて時空間移動装置に乗りこみながら忍者一人ひとりに無言通信を送る。
[231]
{戻ってきて!時空間移動装置の様子がおかしいの}
{わかりました}
まず、お松から無言通信が返ってくる。五郎やケンタや兵士がそれぞれ近くの時空間移動装置に次々と乗りこむ。自動的にドアが閉まり時空間移動装置は四基とも回転を再開する。装置内のモニターに関ヶ原が映っていたが、ホワイトノイズの画面になってからうっそうとした森の画面に変わる。
「勝手に移動している!」
ホーリーの取り乱した声がする。サーチはホーリーと違って冷静にモニターを観察する。
「あれは?」
「御陵じゃないか」
「いいえ、半球の形をしている。円墳なのかしら。人工的なものに違いないわ」
ホーリーが肩にかけたライフルレーザーを降ろすのも忘れて、サーチの横に移動してモニターを凝視する。
「そうだな。御陵は前方後円墳だ」
時空間移動装置が丸い森の真上から少し横に移動する。
「よく見て。四角い台の上に円墳が載っているように見えるわ」
[232]
まわりを口の字型の堀に囲まれた正方形の土台の上に丸い円墳が載っている。時空間移動装置がそばに着地するとドアが跳ねあがる。
「全員……」と、言いかけてホーリーは黙ってしまう。忍者がいない。
{四貫目!}
ホーリーが無言通信を送る。
{ホーリー!どこにいる?}
四貫目の無言通信を受けてとりあえずホーリーは安堵の息をはく。
{四角い堀に囲まれた大きな古墳のそばにいる}
{四角い堀!それは御陵だ}
ホーリーたちは永久紀元前400年の御陵の前にいる。
急に地響きがすると木々がざわざわと揺れだす。無言通信が途切れる。
「地震か」
誰もが地面に伏せる。時空間移動装置が地面を止めどもなく転がる。
「御陵が!御陵が動いている!」
円墳部分が台からずれ落ちるようにホーリーたちの方に落ちこんでくる。古墳を囲む堀の一辺を埋めながらゆっくりと移動する。
「危険だ!さがれ!時空間移動装置を上空に退避させろ」
[233]
ホーリーが地面を這いながら古墳から遠ざかろうとする。サーチがホーリーに手を伸ばすが、ホーリーはそれを無視して胸のポケットからリモコンを取りだして操作する。五郎や兵士もリモコンを操作する。円墳部分が、そして堀からあふれた大量の水がホーリーたちに迫る。
はげしい震動と迫る円墳に圧倒されて振り返る余裕などなく必死で逃げようとするが、あふれた水のせいで乾いた土がぬかるんですべって転ぶ。
地響きと揺れが続く。ホーリーはライフルレーザーを肩にかけていることに気付く。うつぶせのホーリーは両腕に力を入れて顔をあげ、首を思いっきり背中に向けると仰向けの姿勢を取る。すぐそこまで土煙をあげながら円墳が迫る。ライフルレーザーの台座にあるスライドボタンを「拡散」側にずらして構える。小山ひとつぐらいはふきとばせるだろうが対象が余りにも近すぎる。ホーリーはここでライフルレーザーを発射すれば自分も無事で済まないことを覚悟する。ホーリーの足元の地面が不気味に盛りあがる。これしかないとホーリーは唇をかむと引き金に指をかける。すると急に地響きが鳴りやみ震動が止まる。
ホーリーはライフルレーザーの引き金をロックすると立ちあがって走りだす。ピチャピチャと音をたてながら少し先にいるサーチやケンタに追いつくと大声を出す。
「できるだけ離れろ!」
泥だらけになった全員が足元を気にしながら走りだす。十分距離を確保したところで立ち止まって円墳を見上げる。
[234]
「山に追いかけられるなんて」
サーチがへなへなと座りこむ。ホーリーがリモコンを捜査して時空間移動装置を地上に降ろす。
「ここで待て」
首を横に振るサーチの手を振りはらってホーリーが時空間移動装置に乗りこむと開閉スイッチを押してドアを閉めようとする。サーチがかろうじて閉まりかけるドアから時空間移動装置にすべりこむ。ふたりが乗りこんだ時空間移動装置が御陵の上に移動する。
「前方後円墳になっているぞ!」
方形部分の円墳側の肩の部分がかなりくずれている。方形側にはまったく樹木はない。樹木があるのは丸い方だけで全体の形は鍵穴のような感じだ。堀の水がその鍵穴の形をした御陵を囲むと、まだ落ち着かないように小さな波をたてている。
泥だらけの顔で唯一汚れていないサーチの口が大きく開く。
「あれは?」
御陵の側面から無数のキラキラ光る糸のようなものが見える。先端は堀の水を目指して震えるように揺れながら伸びる。
{御陵の堀に近いところから数えきれないほどの管のようなものが出ている。戻った方がいい}
[235]
地上の五郎からも異常な状況を知らせる無言通信が入る。
{わかった}
ホーリーは素直に五郎の意見を受けいれる。ホーリーとサーチが乗った時空間移動装置が五郎のそばに着地する。すでに御陵から伸びた無数の透明の管が堀を埋めつくす。
「まるで生体内生命永遠保持手術のような光景だわ」
サーチの言葉にホーリーは生命永遠保持機構の本部で見たガラス容器の中の胎児のことを思い出す。
「この御陵の中に巨大土偶がいるんじゃないのか」
「そうだとしたら巨大土偶が現れるのかしら」
誰も御陵の側面から出ている無数の管が堀の水につながっている奇妙な光景に声も出さずに立ちつくす。そのときホーリーたちに悲しそうな無言通信が届く。
{子供が生まれる前に死んでいく}
{何万、何億、何兆と死んでいく}
{永遠に生きるために死んでいく}
{子供のいない永遠の世界}
{男女のいない永遠の世界}
数回繰りかえされる。
[236]
「これは瞬示や真美が住職に話していた言葉だ!」
サーチがホーリーにしっかりとうなずく。
「この中に巨大土偶がいるんだわ」
サーチが相手を特定せずに無言通信を試してみる。
{教えてください。誰なのですか}
わずかに後円部分の木々が揺れるが、その後何の反応もない。ホーリーは時空間移動装置に手をあてて見上げる。
「時空間移動装置が誰かに操られていた。あっ!」
ホーリーが急に笑いだす。しかもその笑い声がだんだんと大きくなる。サーチが心配そうにホーリーをながめる。ホーリーがサーチを抱きあげる。
「サーチ、ミリンに会いにいこう」
ミリンはホーリーとサーチの娘だ。もう一七歳になった。サーチに似て美人だ。壮大寺の病院で看護師になるための勉強をしている。
「ホーリー、気でも狂ったの」
ホーリーがサーチを地面に降ろす。
「サーチ、まだ、わからないのか」
サーチはもちろん五郎やケンタもホーリーにけげんな表情を向ける。
[237]
「俺たちは空間移動だけじゃなくて、時間移動もできるんだ」
「えー」
サーチのホーリーへの視線がまともなものに戻る。
「関ヶ原の戦いで光秀が勝ったということは、ここは俺たちの時空間だし、現にこの時空間移動装置で俺たちの世界の永久紀元前400年に来ているじゃないか」
サーチが何とかホーリーの言葉をのみこむ。
「あっ、そうか」
サーチがやっと相づちを打つ。
「ずーっと時間移動できないと思いこんでいたわ」
ホーリーがニヤッと笑う。
「どうやら緑の時間島が御陵に突っこんだとき、俺たちは西暦の世界から永久の世界にはじき飛ばされたのかもしれない」
「Rv26が言っていた時間のロックが解けたのかしら」
サーチがにっこりとホーリーにほほえむ。
「ただし、この時空間移動装置が俺たちの言うことを聞いてくれるとすればだ」
時空間移動装置のドアが跳ねあがる。
「まず、佐助、いや四貫目たちを迎えにいかなければ」
[238]
{四貫目}
ホーリーが四貫目に無言通信を送る。
{四貫目だ}
{迎えにいく}
{重要な報告があります}
{何だ}
{黒い時空間移動装置が現れてしばらくして消えました}
ホーリーがサーチにたずねる。
「黒い時空間移動装置って知っているか?」
「黒い?心当たりはないわ」
ホーリーが再び四貫目に無言通信を送る。
{詳しい話を聞きたい}
{我らは今しばらく光秀殿の動向を見守りたい}
{わかった。俺たちは先に宇宙戦艦に戻る。とりあえず宇宙戦艦の時空間移動装置の格納室の時空間座標のデータをセットした無人の時空間移動装置をそちらに空間移動させておく。何かあったら、その時空間移動装置で宇宙戦艦に時空間移動するんだ!}
{わかった。宇宙戦艦だな}
[239]
[240]