第二十三章から前章(第二十五章)までのあらすじ
第五生命永遠保持センターでは遮光器土偶に変態した胎児がスタッフを黄色い光線で殺戮する。地球連邦軍が遮光器土偶を粉々にするが、死んで土となった兵士の身体を取りこんで巨大土偶に成長する。
ミトは巨大土偶を集中豪雨の摩周クレーターに誘い出して拡散バズーカレーザー砲で封じこめることに成功する。その間に超大型時空間移動船で女達が地球を脱出する。このミトの活躍に感動するが誰もが地球に人間がいなくなった事件に複雑な思いを抱く。ホーリーとサーチは生命永遠保持手術の効果を失ったことを自覚して二度と手術を受けないと決心する。
ある宇宙空間にすべての完成コロニーが時間島によって集められたが、そこでは男と女が戦っていた。瞬示と真美が停戦を訴えると戦闘が下火になる。
前線第四コロニーの中央コンピュータ室で瞬示と真美が例の黙示的な言葉について住職の見解を求める。住職は例の言葉を「子孫が生まれる仕組みと成長して生命として形を整える仕組みのことを意味する」として、C・OS・M・OSという理論を展開した。
【時】永久0255年
[574]
【空】前線第四コロニー
【人】瞬示真美ホーリーサーチカーンキャミミト
住職 ケンタ Rv26 忍者
***
すべての完成コロニーが集められたこの空間に存在する前線コロニーは前線第四コロニーだけだ。その前戦第四コロニーの時空間移動装置の発着ポートで瞬示、真美、ホーリー、サーチ、お松そしてRv26と十数人のアンドロイドがキャミの到着を待つ。
「果たして男の軍隊に追いつめられたキャミは来るかしら」
真美が若々しさを失ったサーチに不安そうに尋ねる。
「お互いに相手の完成コロニーのシェルターを破壊すれば全滅するわ」
「停戦しかない」
中年に見えるホーリーが断定するとサーチも同調する。
「生命永遠保持センターも攻撃を受けている。停戦しないと負傷者の治療ができないわ」
「元々完成コロニーの生命永遠保持センターは縮小されていたから、攻撃を受けなくてもあふれる重傷者の治療は不可能」
[575]
ホーリーがサーチを弱々しく抱きしめる。そのときRv26の耳が急に光りだす。
「時空間バリアーヲ解除」
「来たわ」
サーチがホーリーから離れると手を打つ。
***
カーン将軍を乗せてきた緑の時空間移動装置の横に青い時空間移動装置が現れると、すぐさまRv26が右手を上げる。
「時空間バリアー作動開始」
青い時空間移動装置から四人の女の兵士が降りる。最後に兵士と同じ紺色の戦闘服に身を包んだキャミが降りると出迎えるサーチに近づく。
「随分、苦労をかけましたね」
大柄で威厳はあるが、もう以前のような若々しさはない。長い戦争で疲れ果てたのか生命永遠保持手術の効果が消えて、いまや三十四、五歳ぐらいに見えるサーチよりキャミはかなり年上に見える。
キャミはサーチの横にいるホーリーにも声をかける。
「また、会えるとは思ってもいませんでした」
[576]
ホーリーが軽く会釈する。しかし、キャミはホーリーの横にいる瞬示と真美には特に反応を示さない。お松には黒い装束を珍しそうに眺める程度でやはり反応しない。お松は今にも「将軍」と呼びかけそうになるが、こらえてじっとひれ伏す。キャミはそんなお松を見つめたあと緑の時空間移動装置に気が付く。
「カーン将軍は?」
「スデニ到着シテイマス」
「停戦会議場に案内しなさい」
「ハイ」
Rv26がキャミに背を向けるとある立派な建物に向かって大股で歩きだす。そのとき、瞬示と真美の身体がわずかにピンクに輝きだすが、ふたりとも自分たちの異変には気付かない。しかし、ふたりの変化をホーリーとサーチが興味深く見つめる。
ふたりから発せられた、注意して見ないとわからないくらいの淡いピンクの光の塊がキャミを包みこむ。キャミも連れそう兵士もRv26に付いていくだけだ。サーチがホーリーの腕をつかんで強く握りしめるとホーリーがささやく。
「因果律が変わる」
サーチが強くうなずくと、かつて自分が経験したことが目の前で起ころうとする事態を興奮しながら注視する。兵士に囲まれて歩くキャミが突然両ヒザから落ちて倒れる。
[577]
「将軍!」
一斉に兵士がキャミのまわりで十字の文字をつくるように集まる。キャミの身体を包んでいたピンクの輝きがいつの間にか消えている。
「大丈夫。少し目眩がしただけ」
キャミは気丈夫に手をつくと自力で立ち上がるが、上半身がふらついている。
「あっ!」
キャミが振り返るとすぐ後ろにいる瞬示と真美、そしてお松をまじまじと見つめる。
「いつだったか、生命永遠保持機構の本部で見たあのふたり!」
キャミが目元だけをお松に向ける。
「本部に侵入してきた忍者!あのクーデターのときに!追跡隊の……」
顔面蒼白となったキャミが肩で息をしはじめる。
「なぜ!急になぜ!」
サーチがホーリーの腕から手を振りほどくとキャミのもとに駆けだす。
「気になさらないでください。すぐになじみます。大丈夫です」
サーチの言葉でキャミは自分が取り乱していることに気付く。
「今は停戦会議が大事です」
そう言った後、サーチはささやき声に変える。キャミが両足を少し広げてすっと背筋を伸ば
[578]
す。ホーリーがそんなキャミを見つめて感服する。
「さすが、将軍だ」
ところが次の瞬間キャミはサーチにもたれて気を失う。慌ててサーチと兵士がキャミを支える。Rv26がサーチたちに近づいてていねいにキャミを抱えあげて両腕に載せる。さすがに大柄なキャミもRv26の腕の上では小娘に見える。
「少シ休養ガ必要デス」
Rv26がそっと歩きはじめる。
***
停戦会議場にキャミが現れると白髪のカーン将軍と両脇を固める四人の兵士が立ち上がる。
「遅れたことを深くお詫申し上げます」
キャミはカーンに視線を合わせることなく頭を深々と下げながら努めて平常心を保とうとするが、瞬示と真美のことが気になって仕方がない。
頭を上げたキャミは、生命永遠保持手術の効果を失って手術を受けたときの年齢に戻った初老のカーンに三十歳以上も年上だった生命永遠保持手術を受ける前の徳川理事長の姿がだぶって強い威圧感を感じる。キャミはまだ因果律の清算中なのかもしれない。
Rv26がキャミに細長い楕円形のテーブルの中央に座るカーンの真正面の席に案内する。
[579]
「どうかしましたか?キャミ将軍」
カーンが優越感を含んだ口調で声をかける。キャミはまるで徳川から声をかけられているような錯覚に陥る。そんなキャミにサーチは覇気がないことを心配する。
キャミが腰かけると続いて女の兵士がキャミの両脇に座る。テーブルには椅子が十四席設けられている。向きあって座るキャミとカーンそして四人ずつの兵士の横には二席ずつ空席がある。その空席にサーチ、ホーリーが、そして住職、ケンタが腰をかける。瞬示と真美はホーリーとサーチの後方で壁にもたれるように立つ。
お松を含む忍者は別室で会場の様子をモニターで見つめる。直接的ではないにしろカーンにそしてキャミに仲間を殺された忍者が過剰な反応をするかもしれないという配慮から、ホーリーとサーチがあえて隔離した。とにかく停戦にこぎつけなければならない。ホーリーとサーチが極度に緊張する。
一方、サーチとホーリーのちょうど真向かいのケンタがカーンの右横の兵士をじっと見つめる。サーチがそんなケンタに気付くと真美もその兵士の顔をまじまじと見つめる。
Rv26と三十人ほどのアンドロイドが会場の壁際に規則正しい間隔で立つ。そして停戦会議が始まる。
「個人的に申し上げると、この前線第四コロニーで両将軍が再会するとは何という因果なのでしょうか。しかも、遠い昔、両軍があの完成第十二コロニーで休戦の原因となった瞬示と真美
[580]
というふしぎな男と女……」
ホーリーが半身で後ろにいるふたりを示しながら言葉を続ける。
「……そのふたりがこの場に居合わすとは、誰が想像できたでしょうか」
ホーリーの少し感傷的な言葉で停戦会議が幕を上げる。カーンとキャミは目を閉じてホーリーの言葉を黙って聞く。キャミはホーリーの言葉をそのまま素直に受けいれてうなずくが、カーンにはまったく理解できないばかりか、ホーリーに反発の感情をあらわにする。会場が一瞬静まる。間を置いてからサーチが宣言する。
「まず私達は中立です」
ホーリーが大きくうなずく。
「命令違反だ!」
カーンがホーリーをにらむが、キャミは弱々しくサーチを見つめるだけだ。
「もう戦争はやめてください」
ホーリーがカーンをにらみ返す。
「我々はそんな話をするために来たのではない」
カーンがテーブルを強く叩く。
「生命永遠保持手術の効果が消滅していることを忘れないでください」
サーチがカーンに向かって強い口調でたしなめる。
[581]
「また生命永遠保持手術を受ければ効果は戻る」
「ほとんどの生命永遠保持センターが戦災で機能していません」
「それは女の方だ。我々のセンターは半数以上が稼働している」
カーンの自信にあふれた言葉がキャミの脳裏を貫く。
地球と月から撤退した女の人口が激減した情報をつかんだカーンは、それまでの劣勢をはね返して総攻撃を仕掛けた。地球からの脱出とその受けいれに忙殺された女の軍隊はミトの助言にしたがって用心したが、男の軍隊の攻撃に立ち向かう気力はもちろんのこと武器も底をついていた。女の完成コロニーに侵入する男の軍隊に女の軍隊は押されっぱなしだった。
しかし、知将ミトのもと女の軍隊がゲリラ戦を続けた結果、戦争が長期化する。その間、両軍の戦死者が急速に増える。ある完成コロニーでは数十人しかいない双方の軍隊が何ヶ月もにらみ合った。まさしく瞬示と真美がホーリーとサーチに出会ったあの完成第十二コロニーとよく似たことがいくつかの完成コロニーで起こった。
この間、戦闘で双方の軍隊及び非戦闘員の数が激減した。生き残ることが難しくなるまでに人口が減少した。さらに追い打ちをかけるように今回の戦闘で両軍とも壊滅的な事態に陥った。
「男の軍隊が優勢なのは認めます」
キャミが劣勢をあっさりと認めると真美が瞬示に信号を送る。
【今、優劣なんて意味がないわ】
[582]
瞬示は返事をせずに両将軍の真剣な駆け引きを見つめる。
「カーン将軍、優勢劣勢は関係ありません」
ホーリーがまるで真美の信号を聞いたかのように告げる。
「仮に再び生命永遠保持手術を受けたとしても、すぐその効果は無効になります」
カーンがシワだらけの手の甲を見つめる。
「なぜ、生命永遠保持手術の効果が消滅するのだ?」
カーンの声が今までの強気から打って変わって弱くなる。
「これから申し上げる時間島が原因です」
ホーリーの力強い声がカーンに向かう。
「時間島?」
「時間島!」
カーンとキャミが合唱する。そして両軍の兵士がざわめく。
「時間島が生命永遠保持手術の効果を無効にしてしまうのです」
ホーリーの声の調子は落ちない。キャミもカーンも黙ってホーリーを直視する。
「生命永遠保持手術を受けた年齢に戻ったのが明らかな証拠です」
サーチがホーリーを横目でチラッと見る。
「さて、前線第四コロニーの中央コンピュータの助言をもとに、私達が両将軍をお呼びした目
[583]
的を今から説明いたします」
テーブルの真ん中、ちょうどカーンとキャミの中間点に立体映像が現れる。完成コロニーでの男と女の疲れ果てた無惨な戦闘の状況が生々しく再現される。
***
立体映像を見終えたカーンが目の前のコップの水を一気に飲みほす。キャミの前のコップはすでに空になっている。カーンはじっと目を閉じて思いをめぐらすかのように大きな身体を揺する。しばらくしてテーブルを両手で強く叩いてホーリーをにらみつけてから次にキャミをそれ以上に強くにらんで立ち上がって両脇の兵士をうながす。
「引き上げるぞ」
会場に緊張感が走る。
「停戦に応じていただけるのですね」
サーチがすぐさまカーンに催促する。
「答えはNOだ」
キャミは何も言わずにカーンを見あげる。
「降伏しろ!」
カーンがキャミを見おろして一気にたたみかける。そのときホーリーとサーチの後ろにいる
[584]
瞬示と真美の身体がうっすらとピンクに輝く。ふたりの輝きがひとつになると淡いピンクの光が糸のように伸びて一瞬にしてカーンを包みこむ。今度は自覚があるものの輝きを止めることができない。
ホーリーとサーチが異常を感じて振り向く。しかし、その少し前にふたりの身体から輝きは消えていた。ホーリーとサーチが視線をカーンに戻す。カーンがフラフラと椅子に座りこむとそのまま頭をテーブルに打ちつけて気を失う。両脇の兵士がうろたえてカーンを呼ぶ。
「将軍!」
さらにその横の兵士がコップを持つとカーンの口元に運ぶ。
「カーン将軍の因果律が変わるわ」
サーチがホーリーの耳元でささやく。そのとき、会議室のドアが開くと白い服を着た小柄なふたりのアンドロイドがカーンに近づくとRv26が説明する。
「救急アンドロイドデス」
しばらくして救急アンドロイドはカーンの身体に触れることなく症状を報告する。
「体温正常値ヨリ二分上昇、脈拍正常値ヨリ三拍増加、脳波異常!興奮状態!生死ニ影響ナシ」
「処置方法、見アタラズ」
男の兵士のひとりが携帯通信機の電源を入れるとホーリーが声をあげる。
[585]
「大丈夫です。倒れた原因はわかってます。二、三分もすれば元の状態に戻りますが、感情が少し乱れるかもしれません。それも数分で正常になるはずです」
サーチが瞬示と真美をチラッと見る。すでに瞬示と真美はつい先ほどのキャミと同じ症状であることに気付いている。
「ウー」
苦しそうではないがカーンの口から小さなうめき声が漏れる。
「脳波ガ正常ニ戻リツツアリマス。興奮状態、収拾間近」
救急アンドロイドの声が会場に響く。急にカーンが顔をあげるとカッと両目を見開く。
「将軍!」
兵士の声に反応すると、カーンは差し出されたコップを取りあげて水を飲むが、すぐ咳こんで吐きだす。残りの兵士が必死の形相でカーンの背中をさする。
「だ、大丈夫だ」
咳こみながらもカーンは威厳を保つのが義務のように何とか声を絞りだす。
瞬示と真美がカーンの意識の中を覗く。カーンの必死の努力にもかかわらず、頭の中は混乱に支配されている。次にキャミの心を覗く。キャミの意識は冷静そのものでカーンが停戦に応じないことに失望していた。
【両将軍はどう対処するのか】
[586]
真美は瞬示の心配などそっちのけの信号を送る。
【それより完成コロニーはどうなったのかしら】
真美の信号で瞬示も急に完成コロニーの現状が気になる。
【行くか?】
【ええ】
瞬示と真美の身体がピンクに染まると停戦会議場から忽然と消える。その光景を見たキャミが小さな声を、カーンが大きな声を出す。
「おお!」
カーンが続けて叫ぶ。
「忍者といっしょに侵入してきたヤツラだ!」
カーンはなぜ今まで気が付かなかったのかという気持ちを短い言葉にする。
「どうした!何が起こった!」
キャミが少し前の自分を思い出すと立ち上がって同じ混乱に陥ったカーンに頭を下げる。
「カーン将軍」
まだ平常心に戻っていないカーンは取りつくろうように座り直してキャミを見上げる。
「降伏します。ただし……」
キャミはカーンを堂々と見すえて力強くしゃべる。
[587]
「捕虜としてではなく人間として扱っていただきたい」
カーンは返事することなくキャミから瞬示と真美が消えたあたりに視線を移す。
サーチがキャミの意外な言葉に立ち上がる。ホーリーも立ち上がると、よくとおる声で全員に告げる。
「いったん、休憩に入ります」
サーチもホーリーを横目で見ながら付け加える。
「本隊と連絡を取るのは自由です」
両軍の兵士が携帯通信機をそれぞれの将軍の前に置く。カーンは黙ったまま、まだホーリーとサーチの後方の壁を見つめている。
サーチは自分がカーンの視線の対象になっていると勘違いして、その視線から逃れるように反対側にいるケンタに近づく。そしてケンタの手を取るとカーンの横で通信機を操作する兵士のところへ連れていく。
「ケンタ。あなたのお父さんよ」
その兵士が驚いて立ち上がってケンタを見つめると、ケンタがその兵士に叫ぶ。
「父さん!」
「ケンタか!」
ケンタはポケットから写真が入ったケースを取り出すと涙を浮かべる。兵士は写真をいちべ
[588]
つしたあと絶叫に近い声を上げる。
「なぜ、ここに!」
ケンタがたまらずその兵士の胸に飛びこむ。泣きじゃくるケンタを兵士は力強く抱きしめながら涙を流す。サーチももらい泣きしながら、ふたりに精一杯の微笑みを送る。
一部始終を間近で見ていた住職がRv26に近づく。
「わしを一番戦闘の激しいところへ移動させてはくれまいか」
「ドウシテデスカ」
「怪我人を助けるのじゃ。それに葬儀も必要じゃ」
「危険デス」
「もう十分に生きてきた」
その住職の言葉にケンタが顔をあげてRv26に向かって大声をあげる。
「オレも行く!」
ケンタの父親も力強い声を出す。
「父さんもいっしょだ!」
そしてにらみつけるカーンに向かってきっぱりと言い放つ。
「処罰はいつでも受けます」
「何だと!」
[589]
まだ混乱の収まらないカーンが立ち上がってケンタの父の胸ぐらを弱々しくつかもうとすると、慌ててほかの兵士が止めに入る。そのうちのひとりがはっきりと、そして静かに報告する。
「本隊とつながりました」
そしてカーンとケンタの父の間に割りこんで受話器を差し出す。キャミがそんなカーンと兵士のやり取りを静かに見守る。そのとき、キャミの横の兵士がやはり静かに告げる。
「ミト司令官につながりました」
キャミはあえてゆっくりと受話器を受けとる。
「先にそちらの状況を知らせて」
つながっているのにミトからの応答がない。
「ミト!どうしたの」
やっとミトが返事をする。
「司令官のミトです」
「そちらの状況は?」
キャミが繰り返す。
「お怒りになるかもしれませんが……」
ミトが言葉をいったん切る。
「どうしたの!」
[590]
キャミが冷静さを放棄する。
「将軍に相談せずに停戦しました。両軍とも協力して傷兵の治療にあたっています」
「えっ!」
「それにふしぎなことが起こっています」
カーンも同じような内容の報告を受けて憤慨する。
通信の内容がRv26からホーリーとサーチに伝えられる。ホーリーとサーチに安堵の表情が広がる。
「あのふたり、多分こうなると分かっていて完成コロニーの現状を確認しに行ったんだわ」
サーチが涙を流しながらホーリーに抱きつく。それを見たキャミとカーンが受話器を持ったまま思わず声をあげる。
「おお!」
住職がホーリーとサーチを見つめて自分の頭をポンと叩く。
「わしの出番が消えてしまったわい」
そんな住職を見てRv26が器用に表情をゆるめる。
[591]